一部のMVNO格安SIMには低速通信時でも快適に使えるようにと「バースト転送機能」というものが備わっています。このバースト転送機能の名付け親自体は分かりませんが、IIJmioやその系列のMVNOで現在主に使われているので、ここでも便宜上この単語で説明しようと思っています。
バースト転送機能とは一体どういうものかというと、IIJmioの系列であるDMM mobileが定義するところによると以下のような内容です。
通常、高速データ通信を超過した場合やOFFに設定している場合には、200kbpsの低速通信となりますが、
DMM mobileでは低速状態でもはじめの一定量だけ高速通信で読み込みを行う「バースト機能」があるので、
快適にインターネットを閲覧することができます。
要は低速回線として定めている速度では、利用者のストレスがかかってしまうということで、これを少しでも和らげようと一定の通信量は低速通信の対象外、つまり高速通信時と同じ速度で利用できるという機能です。同じ低速通信の状況でも、このバースト転送機能によって初速で差が付くため、他社の低速通信よりも読み込みがスムーズ、とされています。IIJ系列ではこの一定の通信量を75KBと設定しています。
このバースト転送機能は機能として明言しているところはIIJ系列のMVNOしかありません。その他のMVNOでは利用できないMVNOということになっています。しかし実際に各種の回線を使っていくと、明言はしていないもののIIJ系列と同じようにバースト転送機能を保有し、低速回線でも利用者に使いやすいようにしているMVNOがあります。
今回はそんなバースト転送機能を保有するMVNOについて、わかった範囲で比較をしてみたいと思います。
バースト転送機能と同じ動きをする楽天モバイルとmineo、UQモバイル
スピードテストおよび複数のアプリを使ってリアルタイムの通信量を見ていると、ブラウザ接続時に通常低速と言われる200kbps回線時に規定値の速度を超えた数字を出す格安SIMがいくつか見られました。
IIJ系以外だとそれは「楽天モバイル」と「mineo」、「UQモバイル(無制限のみ確認)」です。
この確認は「tcp monitor」「speedtest.net」「ドコモスピードテスト」「通信量モニター」を使って確認しています。どれもIIJmioが見せるバースト転送機能と同じ動きをしていることを確認したため、バーストの効く回線であると判断しました。
「tcp monitor」についてはグラフとしてはっきりと速度の変化が現れるため、非常に分かりやすいです。パソコンで使うアプリケーションになるため、テザリング経由の確認となっています。同じサイト、Amazonのトップページを開いたのですがグラフはなんか共通してはいません。
「speedtest.net」での確認は恐らく多くの人が確認できる方法だと思います。speedtest.netは数字による速度の変化以外にも、簡易的なグラフで速度がどれだけ出たかを随時記録しています。バースト転送機能があるSIMだと、初速のグラフの山が大きくなるという非常に分かりやすい動きをします。
「ドコモスピードテスト」は、ライトモードという計量ファイルによる速度観測ができるモードがあるのですが、このモードは本当に初速の回線速度しか見ていないらしく、バースト転送機能のある低速通信回線で測ると、200kbps前後しか出てないにも関わらず非常に高速な数値を出してしまうという、参考にならない結果が出てしまいます。
実際にIIJmioと楽天、mineoは200kbpsの低速状態で、UQモバイルは500kbpsの制限になっている回線を、ドコモスピードテストで測ってみると、以下のようなとんちんかんな結果になってしまいます。このドコモスピードテストの結果もバースト転送機能の判断に使えます。
バースト効果の比較
このバースト転送機能について、それぞれバーストの幅のようなものがあり、効果が違っています。ですのでこのバースト転送機能の効果の比較をしてみましょう。
一応先程の「tcp monitor」や「speedtest.net」のグラフの変化、そして「ドコモスピードテスト」の各アプリの結果から、ある程度の機能の強さの違いというのが見えてきます。まずはUQモバイルだけ速度が違うので比較から一歩離すとして、今回の実験でIIJmio・楽天モバイル・mineoの中で最もバースト転送機能の効果が弱く見えたのは、mineoです。
電波状況や時間帯、それにau系ということもあって観測する機器が異なるという問題があるため、断言できるような結果ではないですが、今回の比較ではmineoのバースト転送機能の効果は弱めでした。「tcp monitor」では他3つと比べて低い速度しかMaxで出ませんでした。mineoのバースト時が500kbpsに留まる一方で、IIJmioや楽天モバイルは2Mbps以上を出しているという比較結果になりました。
UQモバイルに関してはそもそもの速度が500kbpsなため、反則的な結果になっているのであえて比較どうこう言う必要はないでしょう。
しかしバースト転送機能の強弱は快適度にはほぼ影響しない
当初この実験をしようとしたときには、バースト時の速度の良い回線をバースト転送機能目的で契約するのならオススメだ、と結論付けようとしていました。しかし実際にバースト転送機能の効果の違いを体感しながらも、その後の低速回線の快適度を含めて体感してみると、バースト転送機能はあくまでも補助的な機能であり、この機能の良い悪いで格安SIM選びが異なることはないという結論に変わりました。
というのも、今回比較的バースト転送機能では優秀な速度を見せた楽天モバイルの低速回線ですが、バースト状態が終わって通常の低速通信回線に切り替わった際に、本来出るとされている200kbpsの速度に満たない80~150kbpsの速度しか主に出ないのを「tcp monitor」とスマホアプリの「通信量モニター」で確認できました。ほぼ一瞬しか効果のないバースト転送機能がいくら高くても、その後のメインとなるダウンロード速度が200kbpsに安定してならないというのは、結局体感としてブラウジングなどが一番遅く感じられた低速回線になってしまいました。
一方のIIJmioでは、今回の実験では楽天モバイルよりもバースト時の速度は出ませんでしたが、その後の200kbpsの部分では非常に安定した速度を出していたため、体感としても楽天モバイルよりも上のように感じられました。しかしIIJmioは、低速回線に3日間で支えるデータ通信量の上限を定めています。3日で366MBの低速通信を行うと、以降すぐに200kbpsの回線速度が100kbpsほどにまで制限されて、低速通信が使いづらくなってしまいます。これでは低速になったときにすら制限に気を付けなければいけない面倒なSIMと感じます。低速制限があるため、例えバーストと安定した200kbpsといえど、快適さにはほど遠いでしょう。
このように200kbps回線の使いやすさも比較すると、今回の実験でバースト転送機能の結果こそ良くなかったmineoが一番使いやすい低速回線だと私的には感じられました。mineoはIIJmio同様に200kbpsの速度では常に安定して同じ速度を維持することが出来、それでいてIIJmioとは違って200kbpsにはデータ通信量の制限は一切ありません。そのため楽天モバイルよりも低速側で反応が良く、IIJmioと違って容量を気にせず使えるため、今回のバースト転送機能の検証結果はよくありませんでしたが、低速回線としてはバースト機能を保有した回線の中では一番使いやすいものになっています。
UQモバイルに関しては比較に使うにはフェアではないため特に書きません。ただただ快適です。
まとめ:バースト転送機能は便利な場面もあるが基本は補助的な役割
今回は低速回線状態に落ちたときに、バースト転送機能のあるSIMを見つけ出し、その中で実際に使いやすいものというのを実際の体感やデータを元に決めてみました。本来はバースト転送機能に重点を置いて、最も効果の出るものを良いSIMだとしたかったのですが、想定外に低速通信状態でも各MVNOで違いが大きく、結局バースト転送機能の優劣で低速回線の良し悪しは決められませんでした。
今回使った中では楽天モバイルに悪い意味で驚きました。状況にもよるのでしょうが、実測200kbpsという速度ですら出るときが少ないというのは残念すぎる回線状況です。もう少し低速側への安定性ということに力を入れて欲しいと率直に感じます。
IIJmioについても現在音楽ストリーミング(Apple MUSICやLINE MUSIC、AWA)が活気づいた中で、低速側が使い放題じゃないのは他社MVNOに比べるとネガティブな要素になってくるのではないでしょうか。音楽ストリーミングが本格的に開始となった状態では、これまでより比較にならないほど低速側に制限がある、というのは比較時に利用者が気になってくるのではないでしょうか。
この2つと比べると、200kbpsが常時期待できる品質の良い低速回線と、制限なく使えてしかも(今回のデータでは低い数値でしたが)バースト転送機能付きのmineoは、バースト転送機能付きの低速回線としては一番使いやすい質を持っていると結論付けられます。
バースト転送機能は便利な機能ではありますが、それも快適な低速側の通信環境あってこそというのが今回の実証結果から導きだした私的な答えです。この機能単体でMVNOの選択に影響が出るかというと、そうではないというのを強く実感しました。
mineoはデータ通信量の少ない低料金プランを用意しているため、今回のような低速回線の品質を考えるとこのプランを用意したのは納得させられます。低速側も快適に使えるmineoは低容量プランの中では契約に際してかなり優先度の高いMVNOになるのは間違いないでしょう。
UQモバイルについては500kbpsの無制限プランという少し異なる意義を持った回線ですので、あまり比較には出していません。しかし500kbpsの速度で通信するまでに比較的長い時間のバーストを行ってくれるため、スペック上の速度以上に体感としては快適な使用感を得られます。無制限でバースト付きの安定した500kbps回線を使えるため、安定感を失い始めているdocomo系MVNOの無制限SIMプランよりも今は使いやすいと思います。
制限は24時間で1GBに達した場合はあるようですが、それも混雑時・混雑エリア内での規制になっているので緩めでしょう。
格安SIMとしては高いですが、ストレス少な目の環境を作りたい人にはこちらの回線も選んでみてはどうかとお勧めできます。
最後に今回の検証で得られたデータと体感ではありますがそれぞれ得られた内容をまとめておきました。
バースト効果 | 200kbps回線の実力 | |
---|---|---|
IIJmio | 優良 | 3日366MBで100kbps前後へ更に低下 |
楽天モバイル | 良 | 80~150kbpsが平均速度 |
mineo | 可 | 安定した200kbps回線 |
UQ mobile | 最良 | 安定した500kbps回線、短期間で1GBの通信で規制の可能性あり |
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